【完】麗しの姫君
「…っ、あの、わた、し」
「…うん」
「…あの、…」
「……ゆっくりでいいよ、姫」
…そんな優しいこと言って、優しく優しく髪を触るなんて、…もっともっと涙が出て来ちゃうよ。
先輩。
伝えたいことがたくさんあって、聞きたいこともたくさんある。
だけど…今必要なのは、私の気持ちを伝えること。
真剣な気持ちをもらったんだから、私も真剣に返さないといけない。
「私、…小さな時から、お姫様に、憧れて、それで、…だから、ずっと、王子様を探してて、」
「うん」
「…先輩を、見つけた時、…王子様だって、思って」
でも、貴方のこと、なんにも知らなかったから。
好きの気持ちも全然わからなかったから、怖くて怖くて仕方なかった。
「…初めて、だったから、王子様を、見つけたのも、近づきたいって思ったのも、」
でも、どうすればいいのか、わからなかった。
「怖くて、踏み出せなかった…」
でも、先輩が、踏み出してくれた。