【完】麗しの姫君
ムゥと口を尖らせて、下を向いて時間を稼いでみるけれど、パパにはなんでもお見通し。
チュ
「ほら、見送ってあげるから、行っておいで」
おデコには、パパの温もり。
ドアを開けてくれるパパに促されて、渋々車の外へと体を向ける。
「今日のご飯は、姫ちゃんの好きなもの用意するよ」
「…うん、行ってきます」
でも、その前に、
「パパ?」
「ん?」
「ぎゅーっ」
「ふふ、愛してるよ。頑張っておいで」
「はーい」
こんな風に甘える私は、まだまだ子供。
いいんだもん、パパにはずーっと甘えるの。
そんなことを考えながら、門をくぐって、くるっと後ろを振り向けば、そこにはまだ私を見送ってくれているパパがいて、ふふ、と幸せが込み上げる。
もーパパ大好き!
「……なにニヤついてるの。気色悪い」
「…あ、おはよ。瀬菜」
「おはよ」
「あのさ、朝の最初の一言から毒吐くの辞めない?」
「いやぁ、あんたの顔見てたら知らぬ間に…」
「…いいじゃん、パパかっこいいんだもん」
「それは別にいいじゃない。姫のお父さんはまじでかっこいいし」
「…だよね⁈……あげないよ?」
「…まだ寝てるの?」