「好きだよ、芽衣子」

「……私も」


彼に手を伸ばして、ゆっくり背中に回す。
今度は彼も、優しく包むように抱きしめてくれた。


「好き」


まるで暗示をかけるように。

夏木くんを思い出すたびに呟く。

彼の腕の中で、こんな葛藤と戦っているなんて事は、口に出来ない。

まるで砂の城を作っているようだ。
すぐにサラサラと風に流されて崩れていく。

それでも私は直し続ける。
それが正当だと思うから。


「好きよ、……浩介くん」





口に出してることが、すべて本物になればいいのに。








< 11 / 78 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop