恋
「好きだよ、芽衣子」
「……私も」
彼に手を伸ばして、ゆっくり背中に回す。
今度は彼も、優しく包むように抱きしめてくれた。
「好き」
まるで暗示をかけるように。
夏木くんを思い出すたびに呟く。
彼の腕の中で、こんな葛藤と戦っているなんて事は、口に出来ない。
まるで砂の城を作っているようだ。
すぐにサラサラと風に流されて崩れていく。
それでも私は直し続ける。
それが正当だと思うから。
「好きよ、……浩介くん」
口に出してることが、すべて本物になればいいのに。