今彼が私にやってみせているのは、先日学部の飲み会で盛り上がったという背中に文字を書いて当てるゲームだ。

背中を這う指がくすぐったくて胸の奥がむず痒い。

こうしてどんどん惹きつけてほしい。
あの人を考えずに済むように。

そう思うこと自体が彼の事を考えているという証拠で、
それにますます落ち込んでくる。


 時が経つにつれ、彼が私を好きかも知れないなんて、何かの思い違いなのかもしれないと思うようになった。


あれ以降、彼は私のことを『友達の彼女』として扱う。

それ以前よりずっと愛想は良くなって、私の友達も混ぜて四人でご飯を食べてくれることもある。

なのになぜかよそよそしさを感じてしまう。

それは、あの強烈な一瞬を体験してしまったからなのだろうか。


< 13 / 78 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop