恋
彼とのお付き合いは、そろそろ半年になろうとしている。
大学に入学して初めての夏、一般教養の講義が終わって講義室から出た時、私は彼に呼び止められた。
最初はとても驚いた。全く見たことも無く、名前も知らない人だったから。
ただ、その癖のある髪の隙間から見えた優しそうな瞳は好印象だった。
「同じ講義いくつか取ってるんだけど、俺のこと知ってる?」
そう問いかけてきた彼に、私は首を振った。
すると彼は恥ずかしそうに頭をかいて「そっか」と俯いた。
「あの、えっと」
「一目ぼれって信じる?」
戸惑う私にそう畳み掛ける彼に、私よりも友達の寧々(ねね)の方がキャーキャ
ーうるさかった。
その後、彼と二人で話をした。
文学部の私とは接点が無いはずの理学部の学生さんで、同い年。
一般教養の講義でよく見る私が気になっていたのだそう。
どこがどう気に入ったのか、それは恥ずかしくて聞けなかったけれど。
彼がたくさんの学生たちの中から私を見つけ出してくれたと思ったら単純に嬉しくて。
彼氏も好きな人もいなかった事もあり、私は即決で頷いた。