もう止められない

 市民マラソン大会当日。

出場ランナーは一般市民が多いからか、ランニング姿の人間が家族や仲間に囲まれているといった集団がそこらここらにあった。

その中でも、夏木くんは一人ポツンとその場で体をほぐしていた。
浩介くんは彼を見つけると、大きく手を振ってかけ出した。


「おーい夏木」

「浩介。……それに」


私達を見つけた夏木くんは、驚いたように目を丸くした。


「来てくれたのか」

「頑張れよ、夏木」

「が、……頑張ってね」


ジャージ姿の夏木くんはいつもより厳しい顔をしている。
それに足にテーピングがされている。

怪我してるの? なんて思ってじっと見ていると、頭の上から浩介くんの声がした。


「まだ痛むのか? なんでこんな大会出ることにしたんだよ」

「いや、これは予防なだけ。……色々吹っ切りたいと思って」


夏木くんの視線が動く。
浩介くんのところからわずか下の私のところへ。




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