「ところが浩介とアンタが付き合うようになってからも、俺はアンタを目で追うのを止められなかった。もう必要ないはずなのにな。……俺は焦ったんだよ。浩介を裏切りたくなかった。浩介の恋愛感情に感化されて、俺までアンタを好きになったなんて笑い話にもならないだろう?」

「夏木くん」

「だからアンタのことは避けてた。近づいて本気になったらやばいからだ。なのに、あの時それが崩れた。あんなに必死で抑えていたものが、一瞬で壊れたんだ」


図書館での、息が触れるような距離。
私の気持ちも一瞬で動いた。


「浩介を裏切りたくない。……だけど、このままじゃ結局騙してるのと同じだ」


押し殺した彼の声はかすれていて、妙に切ない。

夏木くんは私の指を救い上げると軽くなぞった。
時間にして5秒程度の一瞬とも言える触れ合いだ。


「だから、踏ん切りをつけたかった。その為に走るんだ」

「……そう」


何と言っていいか分からない。
一応告白されたことになるんだろうか、これは。


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