恋
「芽衣子」
「……っ、ごめん」
泣きじゃくる私を、浩介くんは睨んでいたと思う。
それでも私は夏木くんを見つめ続けていたし、沿道を走る夏木くんは何度かチラチラとこちらを向いて、それでもゴールを目指して走り続けた。
ごめんね。
待ってろって言われたのに。
だけど、私と浩介くんの関係は私たち二人だけのものだ。
関係を解消するならやっぱり二人だけで決めることなのだと思う。
「……っ、夏木なのか」
浩介くんのかすれた声が頭上に届く。
私が顔を上げた時には、もう彼は私を見てはいなかった。
ゴールに向かう最終コーナーを走っている夏木くんを睨んでいる。
そして、彼は走り出した。
「浩介くん、待ってっ」
私の呼びかけにも応えず、ゴールに向かって走り出す。
私も急いで後を追った。
だけど、ただでさえ足が遅い私が男の人の走りに敵う訳が無いし、人ごみを上手に潜り抜けることもできなかった。