恋
私が息を切らしてようやく追いついたゴール前では、倒れこむようにゴールラインを超える夏木くんと、拳を振り上げた浩介くん。
まるでスローモーションの動画を見ているかのようだった。
浩介くんの拳が、肩からまっすぐなラインを描くように伸びて、倒れこみそうな夏木くんの頬を捉える。
前かがみだったはずの夏木くんは、その手の力に押され、今度は後ろ向きに倒れこむ。
「……はあっ」
私は息を切らしたままその場に入り込む。
浩介くんと夏木くん、二人の視線が突き刺さる。
その目に宿る感情は様々だ。
浩介くんは怒りで、夏木くんは悲しみのように感じる。
「……芽衣子」
先に私の名前を呟いたのは夏木くんのほうで、それを聞いた浩介くんが再び夏木くんに向き直る。
「やっぱり。お前らいつからだ。二人して俺を裏切ってたのか? 親友だと思っていたのにっ」
「違う、浩介」
「浩介くん、止めて!」
再び浩介くんが拳を振り上げ、夏木くんに殴りかかろうとした。