恋
私と寧々は構内を歩き回った。夏木くんを探して。
新学期が始まった大学は活気付いていて、どの教室にも数人のグループが集まっていた。
講義棟を一通り見て、続けて食堂を見ても居ない。後は専門棟になるけれど、そっちは理学部ではない私には行き辛い。
「居ないねぇ。今日は来てないのかな」
「夏木くんも探してるんじゃない? 二人で探し回ってたら出会えなかったりするじゃん。一度食堂で落ち着こうか」
「そうだね」
確かにその通りかもしれない。
苦しい二週間だったから早く会いたくてじっとしていられなかったけれど、じっとしていた方が会えるもの?
自動販売機でコーヒーを買って、二人で窓の近くの席を陣取った。
その時、窓の外で動きを止めた人影があった。
その人物はそろりそろりと私たちの方へと近づいてくる。
そして、怪訝そうな表情で私を見て、窓を叩く。
そこに居るのは、浩介くんだ。
「浩介くん?」
彼は口をパクパクさせているけれど、窓越しで良く聞こえない。
私が立ち上がるのと同時に、彼は食堂の入り口の方へ駆け出した。