恋
「芽衣子みたいに強くなかった」
「え?」
顔を上げると、夏木くんも泣きそうな顔をしている。
「同情なんて誰も救わない」
「なに?」
「でも、始めてしまったらもう抜けられない」
すれ違いざま、「ごめん」と言って駆け出して言ってしまう彼。
「……同情って何?」
疑問は宙に浮いたまま、私は取り残される。
こんなんじゃ終われない。
振るならもっと手ひどく振って。
夏木くんを嫌いになれるだけの力をください。
でないと――――――
「まだ何とかなるのって、思っちゃうじゃない」
彼の戻っていった先では、浩介くんと夏木くんがケンカしていた。
それを止める匡深さんは、無理やり二人を引き離して夏木くんだけを引っ張っていった。
私はそれを眺めながら、今だくすぶり続ける自分の気持ちを処理しきれずにいた。