恋
「芽衣子?」
「あ、……浩介くん」
名前を呼ばれて振り向くと、浩介くんが立っていた。
彼とはあれから、知り合いのような距離感を保っている。
「久しぶり。元気か?」
「うん。浩介くんは? 」
「元気だよ。バイト結構忙しくて、大学来たの久しぶり」
「そうなんだ」
そのまま、私達の間には沈黙が走る。
夏木くんは?
聞きたいのに聞けない、その問いかけ。
でも浩介くんはきっと察知しているんだろう。いつも会話が途切れてしまうのはそのせいのような気がする。
「芽衣子」
「なあに?」
「あいつら、変わらねぇぞ?」
その言葉が胸を抉る。
そうか。仲良くやってるんだ。
ダメね。
彼が幸せならそれが一番のはずなのに。
「そっか」
「俺も変わってないよ。まだ……」
「私も、変わってない」
彼の言葉を遮るように私は続けた。
浩介くんが一瞬持ち上げた手は、空を掴んでまた落ちていく。
苦しいけれど、変わるにはまだ早い。