恋
同情の後始末
地面にリズミカルに響く足音が急に立ち止まる。
ゆっくり目を開けると、私達から数メートル離れた先に泣きそうな彼女と浩介くんが見えた。
「匡深さん」
私がぽつりというと、夏木くんが身を固くする。
そして抱きしめていた腕を解いた。
「匡深」
「夏木、……ヒドイよ」
匡深さんも、後ろに立っている浩介くんもとても傷ついたような顔をしている。
そうね。私が傷つけたんだもの。
だけど。
「私、夏木くんが好きなの」
謝ったりしない。この気持ちが悪いものだなんて思いたくない。
誰かを傷つけたかも知れない。それでも、私には必要な感情だ。
「今はあたしの彼氏よ」
「うん。……そうだね」
夏木くんの腕を軽く押す。
その関係は二人だけのものだ。ケリをつけるにしろ続けるにしろ、私がどうこうできる問題じゃない。
「匡深、俺……」
「あたし、別れないから」
夏木くんの言葉を遮るように、匡深さんが悲鳴に似た声を出す。
「夏木言ったじゃん。彼女のことは諦めるって。次の恋で癒やしなよって言った時、そうだなって言ったじゃん」
「匡深」
「なんで? 何で今更?」
彼女が取り乱せば取り乱すほど、私は何故か冷静になっていく。
夏木くんが彼女に告げたであろう言葉も、私には苦しい言葉だけど受け止められた。
まるで私の分まで、彼女が興奮してくれているようだ。