恋
「そうだ。お前は楽しいのかよ。自分に気のない男を傍において、見かけだけの関係を作ってそんなに楽しいのか」
「た、楽しいよ。だって、好きな人とずっと一緒に入られるんだよ?」
「そしていつか、自分の事を本気で好きになってくれるって? お前ホントにそんなこと思ってんのか?」
浩介くんは、らしくないほど辛辣な言葉を投げつける。
そして彼女から手を離すと、夏木くんの方へ近づいてきた。
右腕をゆっくり振り上げる。夏木くんはそれをただ黙って見ていた。
「俺とおまえは親友じゃなかったのかよ」
ゆっくり伸びた浩介くんの腕は、拳が夏木くんの鼻先に触れる辺りで止まった。
「……まだ、そう言ってもいいのなら」
「親友でいたいなら、ちゃんとしろよ」
「ちゃんと?」
「俺は同情されるのなんてまっぴらなんだよ。芽衣子が本気で好きなら、俺に思い知らせて見ろ! お前になら奪われても仕方ないって思えるくらいあがけよ、馬鹿!」
「浩介」
「芽衣子は見せたぞ。俺に。……長い時間かけて、証明して見せたぞ」
「浩介くん」
そのままゆっくりと、浩介くんはその拳で夏木くんの頬をグリグリと押した。
夏木くんはそれを甘受したまま、目を伏せる。
「……やっぱり浩介は優しいんだな」
「お前のためじゃない、芽衣子の為だ」