ドメスティック・エマージェンシー
呼び出し音が切れ、微かに息を吐いた音がふわりと耳に入ってくる。
有馬、と呼び掛けるとしばらくして「もしもし」と返答を貰えた。
「有馬、どうしたの?」
「……父さんたちに、捕まったって聞いたんだよ」
「ああ……」
彼らが祖母に連絡していて当然のことと言えた。
祖母経由で知ったのだろう有馬はどこか歯切れが悪く、以前のような偉そうで威風堂々とした有馬じゃなかった。
今の有馬は野うさぎみたいだ。
「大丈夫なのかよ」
口調はどこか震えている。
まるで共犯者を労るかのような響きに可笑しくなる。
「大丈夫だよ。これでお母さんたちも大人しくなるでしょうしね」
有馬が黙った。
なにかを考えているのか、あるいは言う前兆なのか。
私は鳥のさえずりが始まるのをソッと待った。
有馬、と呼び掛けるとしばらくして「もしもし」と返答を貰えた。
「有馬、どうしたの?」
「……父さんたちに、捕まったって聞いたんだよ」
「ああ……」
彼らが祖母に連絡していて当然のことと言えた。
祖母経由で知ったのだろう有馬はどこか歯切れが悪く、以前のような偉そうで威風堂々とした有馬じゃなかった。
今の有馬は野うさぎみたいだ。
「大丈夫なのかよ」
口調はどこか震えている。
まるで共犯者を労るかのような響きに可笑しくなる。
「大丈夫だよ。これでお母さんたちも大人しくなるでしょうしね」
有馬が黙った。
なにかを考えているのか、あるいは言う前兆なのか。
私は鳥のさえずりが始まるのをソッと待った。