ドメスティック・エマージェンシー
第十二章
瞬く星空……は、今日は見えない。
月さえ隠す厚い雲が私たちの上に広がっている。

「あれで良かったんか」

珍しく声に張りがない。
静かにゼロの声は私の心に問い掛けた。

「……良かったのよ。私は、あの人の側にはいられない。いるべきではないわ」

優しい葵。
だけど、私とは違う葵。

私は異常者。
あなたは、誰よりも普通の人。
世界が違う。
次元が違う。

私は、あなたを傷付けかねない。

「んで、俺にお前の子守りさせる訳か」

ゼロが感傷に浸るのを阻止すべくわざとらしくため息を吐いた。

葵を待つ昼頃、ゼロに連絡をした。
両親を殺すためじゃない。

私の居場所を提供してほしかったからだ。
つまり、葵の場所へも家にも戻るつもりはもうない。






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