ドメスティック・エマージェンシー
「あなた、ちゃんと免許は持ってるの?というか、これあなたの車……?」

「江里子は真面目やなあ。持ってなくても今更やろ。この車は強奪してきたもんや!」

エンジンをかけながらゼロがひらりと手を振る。
一理あるが、無免許の車に乗るのは恐い。
しかも強奪だなんて、殺人をしているのだからなんてことはないのだろうが、そんな車に乗るのは恐ろしい。
捕まるとかの問題じゃなくて、それほど危険性が高いのだ。

「持ってるの?持ってないの?」

語気を強めるとため息と共に「持ってるよ」と吐かれた。

まだ安心は出来ないが、多少満足した私はシートベルトに手をかけ、セットする。
ようやくエンジンのかかった車は私たちの逃走劇を照らして走り出した。

しばらくの沈黙。
雨が振り出しそうな雲を見つめ怯えていると、江里子、とゼロが呼び掛けてきた。







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