ドメスティック・エマージェンシー
「なに?」
「携帯の電源切っとけ。……たぶん、これからうざいほど連絡が来るやろうから」
ゼロの言わんとしていることがわかった。
葵のことを言っているのだろう。
ポケットから携帯を取り出し、電源ボタンに手をかける。
押すことが躊躇われた。
『葵、私ね……家族が、憎いよ。だから』
自分の言葉が蘇る。
葵にもう一度言うように。
謝る代わりにもう一度。
『だから、家族の前から消えるよ。――葵、あなたの前からも』
葵はこの言葉をどう解釈したのだろう。
私は本来口下手なのだ、この言い方なら……葵のことも憎んでいるように捉えられる。
今更、後悔する。
会って、違うと言いたい。
ありがとうと言いたい。
だけど、一度離れてしまった私にはそれが出来ないのだ。
再会なんてしたら、きっと……決心が揺らぐから。
……葵。
ゼロに聞こえぬよう、口の中で呟く。
愛してる。
愛してるよ、葵……
声として出そうになる言葉を必死に飲み込む。
あまりにも重く、咳き込んでしまう。
どさくさに紛れて、携帯の電源ボタンを強く押した。
「携帯の電源切っとけ。……たぶん、これからうざいほど連絡が来るやろうから」
ゼロの言わんとしていることがわかった。
葵のことを言っているのだろう。
ポケットから携帯を取り出し、電源ボタンに手をかける。
押すことが躊躇われた。
『葵、私ね……家族が、憎いよ。だから』
自分の言葉が蘇る。
葵にもう一度言うように。
謝る代わりにもう一度。
『だから、家族の前から消えるよ。――葵、あなたの前からも』
葵はこの言葉をどう解釈したのだろう。
私は本来口下手なのだ、この言い方なら……葵のことも憎んでいるように捉えられる。
今更、後悔する。
会って、違うと言いたい。
ありがとうと言いたい。
だけど、一度離れてしまった私にはそれが出来ないのだ。
再会なんてしたら、きっと……決心が揺らぐから。
……葵。
ゼロに聞こえぬよう、口の中で呟く。
愛してる。
愛してるよ、葵……
声として出そうになる言葉を必死に飲み込む。
あまりにも重く、咳き込んでしまう。
どさくさに紛れて、携帯の電源ボタンを強く押した。