ドメスティック・エマージェンシー
視覚がぼやけ、脳が休息に入ろうとしている時車が少し荒っぽく止まった。

「着いたで。……起きとるか?」

目の前にゼロの手が蝶のように舞う。
綺麗だ、と言葉にはせず笑んで頷くと「降りるぞ」と肩を軽く押された。

言われて降りると少し視覚がはっきりしてくる。
朝日が水平線から顔を出しているのをバックに、古臭いアパートが佇んでいた。

「ほな行くで」

夢遊病のようにおぼつかない足取りでゼロに着いていく。
途中、パイプ階段で転けたがゼロは笑うことなく立たせてくれた。

ゼロも疲れているのか、それとも私に合わせてくれているのか、仮面を付けていなければ普通の人間に見える。

ここにいるのは、異常者二人だと言うことを忘れそうになる。







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