ドメスティック・エマージェンシー
有馬は前と違って表情が柔らかくなったらしい。
祖母に相変わらず悪態はついているらしいが、祖母を睨みつけていない有馬を見たいものだ。

腕もギブスを外して良いくらいには治ったとか。
……だが、野球が出来ないのには変わりない。
それでも有馬は高校受験のために勉強と、リハビリを始めたらしい。
祖母の資金らしいが、両親には言っていないみたいだ。

以上が糸部から聞いたことだった。

元気にやってるみたいだ、一安心と共に少し寂しくなった。
有馬は前へ進んでいる。
私は……何をしているのだろう。
しかし、この憎悪を消すことが出来ないのだ。
今までの人生を両親に注いできた、なのに愛されなかった。
それどころか無碍に扱われた。

憎しみは大きかった。
どうしようもないくらいに。

有馬は二人を憎んではいなかったのだろうか。
殺したくはならなかったのだろうか。







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