ドメスティック・エマージェンシー
「両親には会いましたか」

思考を変えるべく、もう一つ気になっていた疑問を口にした。
あの二人は今どうしているのだろう。
有馬に執着していた二人。
私を土台にしていた二人。

か細く息をして、ゾンビのように体を動かす二人を想像して哀れになった。

執着対象が無くなり、掴まれなくなった。
土台が無くなり、足場の悪くなった道はさぞ痛いだろう。

しかしその想像は崩された。

「会ってないよ」

「……そうですか」

有馬のことが聞けただけでも収穫だろう。
落胆はあったがすっかり冷めてしまったコーヒーを飲み干して不満を押さえ込んだ。






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