ドメスティック・エマージェンシー
「最後に一つ」

聞いていいものか悩んでいた疑問を結局口にすることに決めた。
だが、やはりドキドキしてしまう。

「あの……事件は進展してたんですか」

恐る恐る聞いた言葉は、彼を突き刺したようだった。
目を見開き、そのまま私を直視する。

私は負けじと見つめ返した。
警察がどこまで掴んでいるのか、この先私たちに捕まるという不幸が降り注ぐことはないのか、そして……ゼロの正体をそれとなく知りたかったのだ。

糸部は力無く頭を振った。
君になら話してもいいだろう、と言いながらルール違反を冒すことに罪悪感を感じているようだった。








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