ドメスティック・エマージェンシー
「正直、難航してたよ。今はどうか知らないが。……ただ」

「ただ……?」

周りに人がいないことをサッと……ではなく、用心深く見渡したあと声を潜めて教えてくれた。

「ただ今までの殺人現場に一文字書かれた三角の紙切れが落ちてたんだよ。一人目の被害者のとこには《A》。そして二人目は《R》、三人目《I》……もうわかるね?」

息を呑んだ。
私のその反応を見て、糸部は最後まで話さずに完結した。

きっとそのあとに続くアルファベットは《M》、そして《A》……これを繋げると《ありま》。

「ありま……」

「君の弟さんと同じ名前だよ」

意味が分からなかった。
ならば……私とあの男が出会ったのは、必然ではなく本当に偶然だったのだろうか……






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