ドメスティック・エマージェンシー
第十五章
――ありま。

口の中で呟く。
日の入らない室内は昼でも薄暗い。
ゼロは横でラーメンを啜りながらパソコンから視線を逸らさない。

ありまとは、ゼロの本名だろうか。
あるいは双子の名前か。

……しかし、同名の有馬が狙われたのだ。
なら、双子の名前と考えるのが妥当だろう。

そうしたら何故ゼロはこの事を私に話さなかったのか。
名前があるだけでも探しやすいというものだろう。

隠す必要があった。
そうなると……ゼロの本名な気もしてくるのだ。

私の思案など知らずに彼は勢いよく立ち上がった。
立ち上がった拍子に周りのゴミが散乱し、腐臭を放った。

……早く掃除しなきゃ。

ぼんやりと思っているとゼロが私の方へ振り返った。
最初は奇妙だと思っていた仮面も今ではすっかり慣れてしまった。





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