ドメスティック・エマージェンシー
「大阪!着いたー!」

新大阪駅で降りると夕方だからか人が賑わっていた。
帰宅ラッシュに遭ってしまい着いて早々ゼロがげんなりしている。

「帰りたい」

「帰ってもいいけど」

わざと笑みを浮かべてからかうと睨まれた。
……気がした。

「帰る訳にはいかんわ、ハゲ」

ハゲてないし。
言い返す暇を与えないようにゼロが足早に駆け抜ける。
慌ててその後ろを付いていくと、ふとあることに気がついた。

……歩きやすい。
こんなにも人がいるのに。
彼がそうしてくれているのだろう。

なんて気遣い屋さんな殺人鬼なのだろう。

一人、密かに笑った。







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