ドメスティック・エマージェンシー
結局ゼロの提案を拒否して、私は彼と待つことにした。

物陰に隠れている訳だから喋る訳にもいかず、双方黙っているとゼロが携帯の電気を最小限にして画面を見せてきた。

《明日、行きたいとこがあるんや》

渡してきたので携帯を受け取り、文字を打っていく。

《どこ?》

《言えん。夕方には戻る。やから、お前はどっかおれ》

今言うことか。
いや、今しか言えないのだろう。
もしかしたら私が混乱するかもしれないから。

それにしても……なんて投げやりなのだろうか。
唖然としている私が納得しているように見えたのか、ゼロは携帯をポケットへ入れ再び張り込みを始めた。

めちゃくちゃにも程がある。
もしや、だからさっきホテルに泊まれと言ったのか。

まあ……一応、彼の育った故郷なのだ、行きたい場所があるのだろう。
私を行かせないのは、きっとゼロの跡形を知ってしまうから。






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