ドメスティック・エマージェンシー
重い体を引きずって、ようやくネットカフェを出た。
運良くゼロが見つかり、おぼつかない足取りだが注意しながら彼の後をさり気なく追う。

残酷な音を立てずに、被害者の苦痛に歪んだ顔を見ないように、彼は一瞬で仕留めた。
もしも、もしも……殺したくないのに、殺しているならば彼の過去がそうさせているに違いない。

勝手な解釈、勝手な憶測……だが、あの時のゼロは……やけに、心細く見えたのだ。

迷子になった子どものように、足元が不安定で今にも転けそうな姿。

あの姿は……私と、重なった。







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