ドメスティック・エマージェンシー
どうしようか、引き返そうか……悩んでいると、袖が下へ下へ伸びていった。

驚いて目をやり、思わず後ずさる。

「おねえちゃん、誰?」

柔らかい髪を高い位置で二つくくりに結び、小さな唇に細い指をくわえている女の子が不思議そうに私を見ていた。

「え、えっと……」

どうしよう、騒がれやしないか。
子どもの扱いに慣れていない私に、ふと葵が頭の中で浮かんだ。

葵……葵なら……

「お花が綺麗でね、つい来ちゃったの」

しゃがんで女の子と同じ目線になって喋りかける。
怯えを無くした女の子は、嬉しそうに微笑んだ。







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