ドメスティック・エマージェンシー
ちょうどその時、店員さんがなおの料理を運んできた。

メニュー通り、サラダに目玉焼き、ウインナー、パンと簡単なセットだ。
パンをほおばりながら、なおが話し始めた。

「その写真、かなさんが死ぬ前に撮ったんだ」

「あの、どうして死んだの?」

恐る恐る聞く。
聞いていいものか迷ったが、聞かずには話が進まないだろう。

「赤ちゃんを中絶してしまったショックにだよ。ゆう兄との間に、子どもがいたんだ」

「子ども……」

私からしたらまるで空想上の生き物だ。
到底想像出来ない赤ん坊という生物を、ゆうまは恐らく喜んだに違いなかった。






< 177 / 212 >

この作品をシェア

pagetop