ドメスティック・エマージェンシー
「苦しんだわ。愛されないことが苦しいのかと思った。……だけど、違うって気付いたの。本当は、誰よりも愛さなければならなかったのは、私だったのよっ……」

気づかぬうちに流れていた涙。
私を抱き締めるように私は顔を手で覆う。

感情に、感じてはいけない気持ちなんてなかった。
それが憎悪だとしても、感じていいのだ。
感情は自分だけの宇宙。

――感情に、制限なんかかけなくていい。

私はあの人たちに愛されたくて[イイコ]を演じていたつもりだった。
もう演技じゃなくなっていたことに、気づいていなかった。

私は、あの人たちによって作られた[イイコ]。

だけど……もう、そうじゃなくていいんだ。

私は誰かのために生きなくていい、自分のために生きるんだ――






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