ドメスティック・エマージェンシー
「そっから大変だったよ。あの人、人使い荒いんだ」

流れていた涙を拭って苦笑いを浮かべた。
よもや自分を都合良く使うために出迎えたのか、有馬がそう疑わなかったのは祖母がそういう人じゃないことをわかったからだろう。

「んで……しばらく経って、母さんたちに会ったんだ」

「会ったの?」

驚いて聞き返すと返事の代わりに目を伏せた。
それで有馬の今置かれている状況を思い出す。

有馬は今受験生なのだ。
進学先など、色々決めなければならない時期だ。

「父さんがリハビリするよう勧めてきたよ。母さんは、それで俺が幸せになれるって言ってきた」

相も変わらずあの二人は有馬に[愛されるための演技]をさせようとしていたのか。
寒気がする。

何故、そうも子どもを支配することを望むのだろう。
それは子どもの私たちにはわからないし、わかりたくもなかった。







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