ドメスティック・エマージェンシー
家に帰ると、父と母がリビングにいた。
珍しいことだ。
退院祝いして以来だろう。

しかし、あの時のような幸福な雰囲気をドアから漏れる光には感じなかった。
静かに自室へ向かう。
まるでへそくりを見つけたような、秘密めいた隠し事を見つけたような気分だ。


ベットにうつ伏せになり、耳を布団に隙間なくあてがった。
微かに聞こえる話し声。
目を瞑る。
感覚を減らして、耳に神経を集める。
聞き逃さないように、頭で言葉を捉えるのだ。

「ありま……こうこう……わたしのせいにしないでっ」

「おま……ちゃんときょういく……なかった……だろうっ」

どうやら有馬の事らしい。
言葉のピースを必死で当てはめる。
ああでもない、こうでもないと試行錯誤し、ハッとなった。

真意が解った瞬間――ドアは、静かに開けられた。






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