ドメスティック・エマージェンシー
第五章
愛とは何だろう。
両親はしきりに有馬に「愛している」と言っていた。
それが羨ましかった。
妬ましくもあった。
なのに、今はそうは思わない。
むしろ哀れに思う。

愛とは、何だろう。


有馬が家出した。
私は不登校になった。

いじめがヒートアップしたのが理由でもあるが、何となく疲れてしまった。

何に疲れたのか分からない。
だけど、酷く無気力で足が動かなくなった。
これを疲れたと言わず、何と言うのか。

そしてその一週間後に、有馬が家出した。

逃亡じゃなく、家出だと言い切れるのは私がその直前に有馬を見た目撃者だからだ。

不登校になって、有馬の高校のこともあり両親はピリピリし始めた。

[イイコ]の私が不登校なのだ。
煩わしくない、世間体にも恥ずかしくない、両親の理想を描いた娘が不登校になったのだ。
双方、悩み、押し付け合い、ケンカし、私をどうにか説得出来ぬものかと試み、また悩み、と繰り返した。

そうして、あの有馬にも八つ当たりし始めたのだ。

追い詰められている有馬が限界を感じるのは当然と言えた。






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