ドメスティック・エマージェンシー
携帯にメールが来ていることに気付いたのは白湯を飲み終えてからだった。
彼氏の名前が表示されていて密かに微笑む。
僅かに気持ちが和んだ。
メールには、今日帰ってくる確認と、明日会うための約束が添えられていた。
了承の返事を送って、玄関の扉が開いた音を聞いた。


有馬が大きな身体を突き動かして駆けていったのが視界の隅で見えた。
葵の顔を思い浮かべながら、ソファーへ歩み寄った時、小さな悲鳴が飛んできた。
張り詰めた空気が玄関から放たれている。


リビングの開き放たれた扉の奥で、有馬らしい影が前へ倒れた。
代わりに影が現れる。
あの大きな木だ、と一瞬だけ思った後に背筋が凍り、息を呑んだ。
背の高い細い男が立っていた。
暗いせいで背格好や輪郭は特定出来ない、けれど揺れ動いて僅かに近寄ってくる影は確かに大きかった。








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