ドメスティック・エマージェンシー
両親は最近ケンカが絶えない。
有馬が見つからない苛立ちと焦り。
不登校への世間体。

両親はそれらに押しつぶされそうで、支え合うのではなく、お互いの首を絞めつけ合った。

見ていると、哀れだ。

自分たちの信じていたものが一気になくなると、他人はこうも余裕がなくなり傷付け合うものなのか。

[家族]とは、こんなにもいとも簡単に破滅するのか。

私は静かに冷静にその行く末を見届けよう。
まるで審判のように。

争って、怒って、泣いて、壊れて、後悔すればいい。
不謹慎にも、私はこんな状況を喜んでいた――


夜、母が乱暴にドアを開けた。
鬼の形相で私の腕を掴んで部屋を後にする。

あまりにも突然で声を出す隙もなかった。
抵抗する間すら与えられない。

だけど、頭の隅で風のごとく私と母が去っていった部屋に置いてある漫画を思い出した。
さっき読んでいたやつだ。

あの漫画の続きを早く読みたい。
悠長にそんなことを思いながら、あっという間に連れて行かれたリビングで、母と父を見つめた。

二人には私はどう写っているのだろう。

驚くことに、私はあまりにも冷静でいた。
冷え切っていると言ってもいい。

なのに心が震える。
何かが起きる、と直感する。






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