ドメスティック・エマージェンシー
監視する目つきで私を見る二人。
観察するように二人を見つめる私。

冷たい空間を破ったのは父だ。

「学校、行かなくていいのか?」

留年するぞ。
父が低い声で言う。

私は俯いた。
やはりこの話か。
分かっていながら、この話をする度に私は俯く。
見たくないのだ。
何も知らない、世間体ばかりを気にする両親の目を。
聞きたくないのだ、キレイゴトなんて。

しかし今日は耳を傾けた。
何かが違う。
何だろう、何を言うのだろう。
真っ直ぐにテーブルを見つめながら父の言葉をジッと待つ。

「答えないと分からないでしょ」

母が私と父の空間に割って入ってきた。
場違いの言葉に舌打ちしたくなる。

それに、何を今更。
私のことを無視し続けたこの十七年間。
たった一つの言葉で分かり合おうなんて無理な話だ。

[イイコ]の私しか知らないくせに。
リスカも知らないくせに。

笑わせる。
なのに私の目には、悔しさが溜まっていた。

雫を零すものかと必死で耐え続ける。

さっきとは嘘のように、感情が荒ぶった。

無視したくせに、無視したくせに、無視したくせに。

親というものは、なんて非道なのだろうか。







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