ドメスティック・エマージェンシー
「俺も事情聴取受けたに決まってんだろ!それに……あの二人は、俺を連れ戻しに来たに違いない!」
最後の方になると、今にも泣き出しそうな表情で私と彼等を交互に見た。
彼等が来た理由を言葉にし、有馬の焦燥感が加速する。
ようやく理解した私は、自分も危機的状況に置かれていることに気付く。
世間体を気にしていた両親だがさすがに姉弟共々いなくなっては、通報せざるをえなくなったのだろう。
そうなると私も連れ戻されることになる。
サッと鬼の方へ目をやり、まだ遠くにいることを確認するとポケットから財布を取り出し一万円札を有馬の手に握らせた。
突然のお金に、有馬は戸惑いつつも目には光が宿る。
「有馬、おばあちゃん家行きな!」
「えっ。で、でも……」
「早くっ!」
初めて有馬の背中を押した。
弟の背中は存外頼りなく、いつも私を見下していた目は大きく見開かれ姉を見つめていた。
幾つもの罵倒を吐いた口から、初めて「ありがとう」と、感謝の言葉が零れる。
私は頷き返し、どちらともなく別々の方向へ走り出す。
鬼の怒声がいつまでも追い掛けて来ていた。
最後の方になると、今にも泣き出しそうな表情で私と彼等を交互に見た。
彼等が来た理由を言葉にし、有馬の焦燥感が加速する。
ようやく理解した私は、自分も危機的状況に置かれていることに気付く。
世間体を気にしていた両親だがさすがに姉弟共々いなくなっては、通報せざるをえなくなったのだろう。
そうなると私も連れ戻されることになる。
サッと鬼の方へ目をやり、まだ遠くにいることを確認するとポケットから財布を取り出し一万円札を有馬の手に握らせた。
突然のお金に、有馬は戸惑いつつも目には光が宿る。
「有馬、おばあちゃん家行きな!」
「えっ。で、でも……」
「早くっ!」
初めて有馬の背中を押した。
弟の背中は存外頼りなく、いつも私を見下していた目は大きく見開かれ姉を見つめていた。
幾つもの罵倒を吐いた口から、初めて「ありがとう」と、感謝の言葉が零れる。
私は頷き返し、どちらともなく別々の方向へ走り出す。
鬼の怒声がいつまでも追い掛けて来ていた。