ドメスティック・エマージェンシー
冬にしては珍しい、太陽の光が強い昼下がり。
だからと言ってやはり外へ出れば寒いだろうし、ストーブを消したら室内は肌寒くなるだろう。

しかし、こんな日は外へ出たいものだ。

優雅に下界を見下ろす。
女王様にでもなった気分で、下校中の小学生や買い物帰りの主婦を眺めていた。

暇だ。
ぼそりと言葉を放ち、ソファーに腰掛ける。

外へ出たいのは山々だが、残り少ないお金を使いたくはないし、ふらふらして警察にでも見つかったら大事だ。

ため息を漏らす。
ならば休め、と言わんばかりに睡魔が歩み寄って手を差し出してきた。
その手を取ろうとした時、ポケットに入っている携帯が着信を知らせる。

睡魔の技に半分くらいやられていた頭はしばらく腕に動くことを命令出来ないでいる。
やっとのことで電話に出た。

「遅い！」

突如飛び込んできた言葉が、私の頭に覚醒することを強要する。
まだおぼろげな目でディスプレイを見ると《有馬》と表示されていた。






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