ドメスティック・エマージェンシー
「で?どうしたの、有馬」

本題に入るとわざとらしいため息が耳をくすぐった。
どうしたの、じゃねえだろ、と呆れたように言い、少し間を置いてから続けた。

「……着いた」

「え、本当?!いつ?」

「昨日」

心なしか有馬の声に照れくささが滲み出ていた。
主語がないがすぐに祖母の家だと理解し、同時に線香の匂いや畳の目が蘇る。

本当に有馬行ったんだ。

安堵し、同時に驚いた。

有馬が私の言うことを聞くなんて。
ようやく姉らしいことが出来たことに誇りを持つ。

良かった。
これで有馬は無事だ。
やはり祖母の家へ行かせて良かった。

喜んで感動に浸るのも束の間、有馬が戸惑いを吐き出した。

「それで、江里子。お前、今どこにいるんだ?」

息を呑む。
宝物を奪われるかもしれない恐怖と、焦燥感が一瞬にして駆け巡った。






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