ドメスティック・エマージェンシー
「ばあさんがさ、父さん達が心配しているからって聞かなくて結局電話したんだよ」

うん、と口を動かした。
有馬の耳に届いたのか分からない。
ちゃんと声に出せたのかも定かではないくらい、動揺を隠せなかった。

心臓が混乱し、叫んでいる。

「そしたらさ、江里子もそっちにいないか?って言われたらしくて……。俺、お前は母さん達といると思ってたから驚いたよ」

有馬の言葉が、一字一句鐘のように脳内に響いた。
何か誤魔化さなきゃ、と頭が急かすのに急かせば急かす程息がもつれ、口を開けては閉じての繰り返しだった。

「なのに、俺に……」

今度は有馬も黙り込んだ。
負い目を感じてるのか、照れ臭いのか、それ以上なにも言わなかった。







< 77 / 212 >

この作品をシェア

pagetop