ドメスティック・エマージェンシー

「動物園って……イルカとか？」

「イルカショーか、あるかもね」

珍しく葵が子どものようにはしゃいでいる。
いつも笑っている人だが、その笑みは大人びていて百合のように小さく笑った。
今は大きく笑うひまわりのようだ。
こんな表情もいいな、と彼氏を見つめる。

葵が、レッサーパンダなんかもいいね、と同意を求めてきたが途端に赤面した。

「どうしたの？」

手のひらで口を隠してそっぽを向いている葵に問い掛ける。
葵は二度わざとらしく咳き込んでから私に目をやった。

「……好きなんだ、動物」

「うん、私も。だから行こ？」

手を引っ張り、立つように促す。
母が駄々をこねる子どもにするように引っ張っていると、しばらくして「まだ準備してないよ」と葵が苦笑いを浮かべた。