ドメスティック・エマージェンシー
「ゼロ……」

復唱する。
本名ではないのだろうが、この男にぴったりの名前だと思った。
もちろん、そうなるように付けたのだろうが。

「他は?」

「お、俺に興味津々?」

ゼロは、少し年上の男のように笑みを浮かべからかった。
無視して、はぐらかされるだろうか、と見ていると指を三つ広げ「教えられるんは三つだけや」と宣言した。

「まず、一つ。俺はお前と同い年や」

「えっ?!」

ということは、十七歳か、十八歳くらいということか。
妙に親近感が湧く。

緊張感が解け、あの誘いも鬼ごっこやかくれんぼのように感じてきた。

もちろん、だからといってまだ誘いには乗れない。
そこまで軽率じゃない。





< 89 / 212 >

この作品をシェア

pagetop