フシダラナヒト【TABOO】
「なんだ……」


思わずついて出た言葉に、先生が「どうした」と尋ねる。


「私、10離れた人とお付き合いしたことがあって。それ考えると変な感じで」


本当は現在進行形だけど。

私が小さく笑うと先生は困ったように頭をかいた。


「やっぱり上田は変わったよ。昔はほら、そういう話避けるタイプだっただろ? あの頃のかわいいイメージが」

「子供扱いしないで」


言葉を遮って先生の左手を掴む。


「昔は教師と生徒でも、今は10違いのただの男と女です」


そのまま手を引いて胸に顔を埋める。


「全部先生のせい。先生のこと好きだったから誰にも恋の話ができなかった」


そこまで言って顔を上げた。


「……上田」


躊躇いがちな視線と背中に回された手の感覚。



ほら、手が届かないことはない。


先生の左手にも私の左手にも光るものはない。



今だけでいい。10年前の恋を思い出させて。

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