フシダラナヒト【TABOO】
「かえる。ゆーちゃん、おんぶ」


突然ブランコを降りて彼は言った。


「え、おんぶ? 史くん2年生だよ、もうお兄さんだよ」

「ヤダ」


強がっても最後は甘える。よかった、いつもの史くんだ。


史くんを背負って公園を出る。


重くなったなぁ。

子供の成長は早い。私に懐いてくれるのも今だけかもしれない。そう思うと少し寂しい気もした。



「オレ、ゆーちゃんのカレシになる」


唐突に後ろからそう言って史くんはぎゅっと力を入れた。


「えー、彼氏はおんぶされたりしないよ」

「じゃあ、オレがする」


降りようと暴れるので私も手に力を込める。


「それは史くんが優ちゃんより大きくなってからね」

「じゃあ大きくなってオレがゆーちゃんおんぶして、そしたらオレがカレシね」


史くんが私より大きくなるのは何年後かな。その頃には別の女の子と恋をしているだろう。


「いいよ」


きっと消えてしまう約束を背中で交わす。




「オレ、すぐ大きくなるよ」






この小さな約束が本当に守られるのはまだずっと先の話。
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