フシダラナヒト【TABOO】
あれ、この状況。今の私達にちょっと似てるかも。

それは物語の中盤の映画館でのシーン。カップルシートに座るヒロインと片岡。片岡が彼女にもたれ掛かって眠り、だんだん距離が縮まる。そのまま手が繋がれ、ヒロインは片岡が起きていることに気づく。



展開が展開だけに落ち着かない、そう思った瞬間。


えっ?


手が触れるのを感じた。


隣から伸びる遼くんの温かい手が私の手を探り当て、恋人繋ぎになる。


まるでファンが見る夢のようにスクリーンと同じことが現実に起きている。


どうしよう。どうしてこんなこと。



映画では片岡がヒロインの手を引いて映画館を出て、彼の部屋に向かった。



私達は……?



もう心臓の音以外何も聞こえない。




そして握られた手が引かれた。




「渡さない」


スクリーンを背にやっと聞こえたその音。

それは片岡の声であり、遼くんの声だった。
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