フシダラナヒト【TABOO】
「よければ記念に1枚いいですか?」
帰る前に尋ねる。
普段は人は撮らないのになぜか今日は撮りたかった。彼を、この時間を、残しておきたかった。
「はい」
快い返事に安心して彼にカメラを向け、数枚写真を撮る。
そして画面を確認して驚いた。どれも景色だけの写真で彼が写っていない。
訳が分からず、慌てて視線を彼へと戻すと、そこには誰もいない。
「すみません、写らなくて」
背後からクスクスと笑う声。
「人間はちっぽけだと言ったでしょう? 貴女が思ったのとは意味が違いますが」
いつの間に後ろにと思った時、首筋に冷たい唇を感じた。強烈な目眩がして、殺されると感じた瞬間。
「でもやっぱりやめます。……食事もいいけど」
彼は言葉の途中でカメラを奪い、私に向けた。
「おもちゃにするのも悪くない」
私を撮り、目の前で消えた気まぐれな「人に非ざるもの」。
残ったのは首筋の熱だけ。
彼の写真は撮れなかった。代わりに私が魂を抜かれた。
帰る前に尋ねる。
普段は人は撮らないのになぜか今日は撮りたかった。彼を、この時間を、残しておきたかった。
「はい」
快い返事に安心して彼にカメラを向け、数枚写真を撮る。
そして画面を確認して驚いた。どれも景色だけの写真で彼が写っていない。
訳が分からず、慌てて視線を彼へと戻すと、そこには誰もいない。
「すみません、写らなくて」
背後からクスクスと笑う声。
「人間はちっぽけだと言ったでしょう? 貴女が思ったのとは意味が違いますが」
いつの間に後ろにと思った時、首筋に冷たい唇を感じた。強烈な目眩がして、殺されると感じた瞬間。
「でもやっぱりやめます。……食事もいいけど」
彼は言葉の途中でカメラを奪い、私に向けた。
「おもちゃにするのも悪くない」
私を撮り、目の前で消えた気まぐれな「人に非ざるもの」。
残ったのは首筋の熱だけ。
彼の写真は撮れなかった。代わりに私が魂を抜かれた。