フシダラナヒト【TABOO】
「これ、落語?」

「最近隣に越してきた男がたまに聞いてる。ここ壁薄いから」

「若い人?」

「俺と同じくらい」


詳しくない私でも知っている『寿限無』。隣の部屋から聞こえてくるのはたぶんCDか何か。


「じゃ、俺行くわ」

「私も洗濯したら帰るね」






「良い天気」


洗濯物を干すためベランダに出た。心地良い日差しと気温。

そしてより大きく聞こえる寿限無。

エンドレスリピート中で、こんなに聞いたら私も暗唱できそうだ。




「パイポパイポの、あれ?」


これまでとは違う生の声。そしてその声は何度やり直しても途中で詰まって最後までたどり着けない。


「シューリンガンの……」

「グーリンダイ!」


もどかしくなって思わず言ってしまった。
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