フシダラナヒト【TABOO】
「呆れた。しっかし、そんなんでよくフラれねぇな。彼氏の前でどれだけ猫被ってんの?」

「被ってないよ。今だって彼のために手料理を作ろうとしてるわけだし。健気すぎる彼女だよ」

「人に荷物持たせといてどの口が健気とか言うんだ。俺にとっては、今まで出会った中でも相当ヤな女だからな」


嫌と言いながらそんな顔はしていない勇二を見ていると、笑ってしまう。



「そんな私が好きなくせに」

「バーカ。誰がお前なんか」

「えー。私は勇二のこと好きだよ」


斜め後ろを歩いていた勇二は立ち止まって、こちらをじっと見つめていた。


「だってこんなこと頼める友達、勇二しかいないもん」


私がニコリとすると、逆に勇二はふてくされたような顔になった。


「こんなこと頼めるっつーか、友達自体いないだけだろ」

「はは。バレた? でもいいの。勇二がいれば。他に友達はいらない」


そう言うと、勇二は大きく溜息をついた。
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