フシダラナヒト【TABOO】
見られている感覚。見つめられている感覚。


四角の中の愛しい彼氏には決して生み出せない絡みつくようなリアルな空気は、自意識過剰でも思いこみでもない。



最初に視線に気付いたのは、ある一冊の本を取り出した時。

本棚の向こうに見えた若い男。少ないと言っても館内には私以外の閲覧者もいる。だけど若者は珍しくて、好奇心で本の隙間から彼の顔を覗き見た。

するとばっちり目が合ってしまった。

大学生くらいの男の子。ふわふわとした明るい色の髪は図書館よりもレコード店が似合いそうで、そんな彼がなぜか本棚越しに私をじっと見ていた。


不快に思わなかったのは彼が整った顔をしていたから。現金な女だ、私も。

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