King of Dragon -龍王-
「そこらへんで休んでて。俺は草の上で寝転がってくるから」
「え!? で、でも時間が……」
ユリアの必死の制止も聞かず、ウィルはそのまま近くにあった林(というより、森に近い)へ入って行ってしまった。
ポカンとそれを見送り、ユリアは力が抜けたように丸太に座る。
「さっきまで、時間勿体ないって……」
自分が海に落ちたのは昨日。恐らく、あの後2人は橋に向かったはず。
もしかしたら、囮になんかなったせいで傷付いてるかもしれない。
けれど、回復技が使えるのは自分だけ。
そうユリアは考え、じわ、と涙を浮かべた。
「……大丈夫、かな。っどうしよう」
肩を震わせ、ギュッと手を痛い程握りしめる。
「漣……椎名……!」
名を呼んでも意味などなく、その声は虚しく響くのだった。